自分さえ我慢すれば、
みんな丸く収まるんだ、
という考え方は、健全ではない
というお話をこれまで何度か
このブログでお伝えしてきました。
なぜなら、
誰かが我慢して得られる調和など、
本当の調和ではなく、
全体に歪みを生じるからです。
あなたが我慢してしまうことで、
本当はそこでみんなが自分自身の責任を
引き受けて在り方を正したりするチャンス
だっかかもしれないのに、それを
奪ってしまうことになるからです。
一般的には、誰かのために我慢するのは
美徳と捉えられることが多いのかも
しれませんが、
よ～くその時の自分の心を見てみれば、
自分が本音を言うことで、
場が乱れてしまう煩わしさから
逃れたいという思いがあったのでは
ないでしょうか。
それは、誰かのためではなく、
本当のところは、
その苦しさ、居心地の悪さから逃れたい
という利己的な理由からの行動なのです。
本当に在るべき姿から逃げたが故に、
自身の内に歪みを生じ、結果それが
全体の歪みとして映し出される
という構図になっています。
それが、一見調和しているように見えるし、
あなたの犠牲によって楽ができる人にとっても
都合が良いので、できればその状態が続いて
くれればいい、ということで、長々とそれが
継続されてしまうということがあります。
そういう在り方が長年の習慣として
代々続いていくと、変な形で
伝統というしきたりになったり
することもあるのかな、と思いました。
健全なのか不健全なのか、
私が見分けるときの基準は、
その人が本来引き受けるべき責任を
しっかり引き受けているか、
他者が負うべきものまで引き受けていないか
を注意深く見ます。
責任の範囲をどう捉えたらいいのか
わからないというお声もしばしば
聞かれるのですが、
要は、他者をコントロールして
支えてもらわないと自分が立てない
状態になっていないかどうか
だと思います。
誰しも、何かしら人の助けを得て
生きているところはあると思いますが、
ポイントは、「他者をコントロールして」
という部分なんですね。
相手が何ら義務感なく気楽に
それをしたいからしているのであれば、
その人はその人自身の自由意思で
あなたを助けてくれているのでしょう。
けれども、何かしら
下心のある絡み合ったパワーゲームが
そこに存在しているとき、
それは健全ではないものになっていきます。
たとえば、
愛や賞賛、注目を与える代わりに
相手から何かしらの利益を引き出すとか、
相手に罪悪感を抱かせて、
ゆすりたかりのように自分の欲求を
満たすような何かをさせるとか、
これだけやってあげたんだから、
あなたも私に対してこうしてよ、とか。
世の中にはこんなつながり方をしている
関係性がたくさんありますが、
なんだか重苦しく、不快感が伴いますね。
相手の意図に絡み取られて、
束縛されている感覚があるからです。
そういうのがなく、
フェアで自由な関係性でいられるとき、
自分も相手も、心は軽やかで、
言いたいことを言いたいように言い合い、
互いの意思を尊重できる気持ちの良い
関係性が構築できるのです。
これが、どこにも歪みのない、
健全な関係性です。
助け合うのも、基本、
この関係性がベースであれば、
自分も相手にも負担にはなりません。
みんなが精神的に自立していて、
幸せでいられます。
けれども、
ここで誰かが一人頑張りすぎてしまって
他者の引き受けるべき領域の責任まで
引き受けようとかし始めると、
あるいは、
誰かに自分の責任を押し付けて
自分は楽をしようとすると、
この調和は崩れていきます。
良かれと思ってそういうことをしたとしても、
この原則を崩してしまうのなら、
それは自分のエゴなのです。
どこかに、自分の中の、
何か落ち着かない気持ちから逃れようとする
逃避がそこにあるはずです。
頑張っている自分であるときだけ、
自分自身の存在意義を認められるから
頑張り続けてしまう人もいますが、
そういう人は、頑張ることをやめたら
自分の存在意義を失ってしまい、
その瞬間から自分を支えられなくなるので
頑張るのをやめられないんですね。
そういう場合は、
元々あった無力感や無価値感を
ダイレクトに認め、触れて統合していく
必要があります。
このように、
一見別々のことのように思えることが
構造的に心の在り様に影響して
共依存や自立、コントロール、取引、
パワーゲームといった様々な人間模様が
繰り広げられるのです。
こうした複雑な構造を読み解いていくときに、
その人が負うべき本来の責任領域を
明確につかむことは非常に重要です。