見る目、聞く耳を持って対話する

昨日は感情解放ワークショップでした。常連の方のご参加だったので、ワークの基本的なポイントを押さえていくのと、少し上級者向けのご説明をして、一歩踏み込んだ問いかけの仕方などをお伝えさせていただいました。

よく自分と向き合う、自分と対話すると言われますが、そうは言ってもどうしたら自分と向き合ったことになるのか、どうやって自分と対話して行ったらいいのかなど、多くの方の中ではかなり漠然としていて、実際やろうと思ってもなかなか具体的なところが分からないということがほとんどなのではないでしょうか。

分からないから、何となく自分の今の気持ちはこうなのかな、と推測して「考えてみる」とか、置かれた状況についてあれこれ「分析して整理してみる」ことなどが自分と向き合うことなのだと捉えている方もあるでしょう。

けれど、自分の気持ちは考えてみても本当のところは分かりませんし、いくら状況を整理分析してみても、所詮は思考で納得させて収めるだけで、感情については手つかずのまま、繰り返し浮上しては持て余すのがお決まりのコースなのではないでしょうか。

もちろん、自分と向き合うことの中にはそのように思考して整理する部分もあるでしょうが、感情を抜きにしては自分と向き合ったことになりません。にもかかわらず多くの方は感情に対する適切な対処を知らないので、どうしたらいいか分からず、結局その部分を抜かしたところで収めようとしているのです。

感情は感情として感じ、受け止めなければ、何年でも、場合によっては次の人生までも持ち越して行きます。ワークをしていると、この持ち越しの感情を多くの方が体験されます。

私自身も、明らかに今世ではあり得ない感情をいくつも経験しています。

たとえば、男性として生きた人生で味わった妻子を失った悲しみや、今世では私に子供はいませんが、子供と生き別れた悲しみなどもでてきたことがあります。

そうした人生で味わった未完了の感情が、今生の様々な局面において知らずに顔を出し、運命を左右していることがよくあるのです。

私がワークを誘導しているとき、その方の呼吸や表情、身体全体のエネルギー状態など様々な要素を観察しながら進めていますが、その方が感じているものに意識を向けていると、時折今世のものではない、別の人生での体験が重なるようにして見えてくることがあります。

悲しみのエネルギーを身体で感じ、じっとそこに命の呼吸を送っていくことで、かつて分離・隔離して時間を止めてしまったストーリーが再び流れ出していきます。同じ質の感情の体験を魂は何度も繰り返していることがあって、一つの感情を辿っていくことで、別の人生のストーリーが表れてくることがあるのです。

これは何も特別なことではなく、誰にでもあるものです。過去世と言って、自分にそんなものがあるなんて信じられない!と思う方も中にはあるかもしれませんが、過去世の実在の真偽は、ワークにおいては実はどうでも良いことです。

ただ、そうしたビジョンが現れてきたというのは紛れもない事実なので、そこを在るがままに受け取ってワークを進めます。

それは故無く出てきたわけではありません。信じがたいストーリーが出てきたとして、なぜそのストーリーだったのでしょうか。前日に似たような映画を見たのでしょうか。見たとしても、全ての人が同じようなストーリーを再び見るわけではありません。にもかかわらず、なぜあなたには出てきたのでしょうか。

それは偶然ではないのです。そのことを在るがままに受け止め、さらに自分の中でかすかに疼いているサインを注意深く読んでいくと、ちゃんとその理由が出てきます。

ワークではこの理由をしっかり受け止めて応答していくことが重要です。漠然とした「悲しみ」や「怒り」などをただ体で捉えて命の呼吸を送っていてもなかなか終わらないのは、そうした理由からなのです。

悲しみのエネルギーが身体の中に在るとして、それは一体どうした理由からの悲しみなのでしょうか。大切なものを失った悲しみ、誰かに裏切られた悲しみ、誰からも理解されない悲しみ、自分を否定された悲しみ。一口に悲しみと言っても、実に様々バリエーションがあります。

そして、それぞれの悲しみの奥には、また少しずつ異なった微妙な感情が絡んでいたりします。

初心者の方は、とにかく身体の中に感情のエネルギーを特定し、命の呼吸を送って弛めていくまでができるようになることが目標です。それがある程度できるようになったら、感情のエネルギーが飲み込んでいる言葉を吐き出させてあげたり、相手の意識の中に入って見て相手の感情を受け止めていくこともしていきます。

ひとつ一つの段階で、変化を注意深くチェックしながら進めていきますが、変化が無ければ別のアプローチが必要だというサインです。いつまでも同じことをしていても、解放には近づきません。

行き詰っているときというのは大抵、自分がやっていることと、感情のカケラ君が欲していることがズレているのです。ここに気づき、修正するプロセスが必要になってきます。

多くの方は、相手の状態がどうであれ、自分が良いと思い込んでいることを相手に押し付けているものです。だからうまくいかない。内なる自分の気持ちに対しても、外の人間関係でも、相手をよく見ることは大切です。

せっかくの対話のひとときが独り善がりなものにならないように、どうぞ見る目、聞く耳を持って、じっと心を澄ませる習慣を持ってください。

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