心の鎧を脱いで、自由に羽ばたく

私たちは何か辛いことがあると、それを様々に解釈し、言い訳をしたりラベル付けをしたりして、何とかその辛さを和らげようとあれこれ「思考」します。けれどそうすればするほどに、その出来事は複雑化し、元々の痛みは何だったのか訳が分からなくなって、苦しみの軽減とは正反対の方に向かってしまうのです。


感情解放のワークでは、そうして複雑化させてしまった幾層ものすり替えや転嫁の元をたどりながら、元々の痛みのところにまで戻って、それを解放していきます。

そのような複雑な構造を作り出したのは、ひとえに「自分を守りたい」というエゴの防御本能故なので、それを解いて痛みの元に近づいて行くことは、ある種の恐れを伴うことが多いものです。

だからこそ、自分の都合でワークを進めようとするのではなく、このエゴの恐れをよく汲みながら対話することが大切です。そうでないと、ガッチリと固まってしまって身動きが取れなくなってしまうでしょう。

私たちは、それほどまでに傷つきたくなかったし、痛い思いや恐い思いをしたくはなかったのです。そういう自分の側面を在るがままに認め、受け入れていくことが大切です。

こうした歩みを重ねるほどに、自身の内の分離が融けていきます。分離しているが故に苦しかったその痛みが、和らいていくでしょう。自分への嫌悪や絶対に許せない、受け入れがたいという拒絶がなくなるというのがどれほどの安らぎになるか、それは体験して見ないと分からないでしょう。

自分の中の弱さを許せない人は、他者の中に弱さを見ることが許せません。同じように、自分の中の狡さや非情さ、無能さなどを許せなければ、他者のそうした要素も許せないのです。

これを逆に読むこともできます。他者を許せない!と思うときは、他者の中に見るまさにその要素が自分の中に在るのであり、それを拒絶しているわけです。自分の中で拒絶した要素を他者に投影して見て、反応しているだけのことです。

そもそも、そのように拒絶する自身の要素は、そこまでして拒絶していないといけないものなのでしょうか?根本的にここを問うてみることです。

なぜそうまでして拒絶し、絶対に触れないように何重もの防御壁を作って封印しているのでしょう。

その答えは、単にそれで味わうことになる苦しみに耐えられないから、というところに行きつくのだろうと思います。けれどそれは本当でしょうか?抑圧し、自身の奥深くに沈めてもそれほどまでに苦しいのに、そうしていた方がまだマシなのでしょうか。

検証もしないでただ何となく恐いからというだけで、この先も同じように耐え続けていく理由はありません。

抑圧し続けることは、毎瞬莫大なエネルギーを消費しながら、せいぜい現状維持ができるかどうかというくらいです。絶えず抑圧されたエネルギーは噴き上がって来ようとしますから、いずれは抑圧しきれなくなっていくでしょう。

となれば、向き合うのか向き合わずにやり過ごすか、という選択ではなく、いつ向き合うのかというタイミングの問題だということになります。

どんなものごとにもタイミングがありますから、じっくりとご自身のハートと対話しながら、「そろそろだよ」というサインが感じられたら、少しずつ意識を向けてごらんになるといいでしょう。

耐え難い苦しみを、受け止めていく方法はあります。無理だと思うのは、その方法を知らなかったから、どうやっても可能性が見えなかっただけです。

きちんとした方法を知れば、諦めていた心の痛みを癒していくことができるのだとしたら、それまで無かった選択肢を選ぶこともできるのではないでしょうか。

内側に分離させ、おいてきてしまった心のカケラたちは、あなたが迎えに来て、抱きしめてくれることを一日千秋の思いで待っています。こんな苦しみをあと何重年も続けていきたいだなんて、彼らは思ってはいません。

隙あらば、自身の存在を私たちに思い出させ、受け入れてくれるようにと、日々様々な出来事を引き寄せ、呼びかけ続けているのです。私たちは、彼らの呼びかけにいつ応えることができるでしょうか。

最も避け続けてきた痛みの核心に触れ、それを抱きしめ、統合することができたなら、とても深い安堵の感覚が訪れます。バラバラになっていた自分自身の心と身体と魂が、在るべき状態に戻ってくるからです。

痛みを受け止められないが故にバラバラにせざるを得なかったわけなので、受け止められたら、もうバラバラにしておく必要がなくなります。人生は、もっとシンプルなものになっていくでしょう。そして、もっとパワフルに、自身の力の源泉につながって行くでしょう。

そうなれば、自分を守るために身に付けていた何重もの心の鎧も、もう必要ありません。のびのびと自由に、この世界の風を受けて羽ばたけるようになります。

あなたが望んでいたのは、地雷を踏まずに済むようになるための危機回避能力なのではなく、こうした自由なのではなかったでしょうか。

一番最初の望みを思い出しましょう。

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