人間として生きることの醍醐味って、
常ならざる感情の極みにあるんじゃないか、
と思うことがしばしばあります。
セッションしていると、
様々な人間心理の深層に触れていく機会が
多いのですが、人間としての強さも弱さも
切なさ、哀れ、愛おしさ、勇敢さなどなど、
善きにつけ悪しきにつけ、
狂気とも言えるような情念の生み出す
濃密な世界のストーリーに触れては、
人間の思念エネルギーの
無限の可能性を思うのです。
セッションで取り上げるのは、
大概がドロドロの情念がキリキリと
絡みついた複雑怪奇なストーリーが
ほとんどなのですが、
一見、グロテスクと思えるような
おどろおどろしい情念にも、
丁寧にその心のひだを読み解いていくと、
悲しくも切ない、純粋な思いが
見えてきたりします。
それが積もり積もり、練り上げられて
いつの間にやら奇怪な怪物のような
エネルギーとなって、相手に襲い掛かり、
自分共々、破滅に引き込んだりするわけですね。
こんな風に見ると、何と恐ろしい！
自分は関わりたくないと思ってしまう
でしょうけれど、
人は誰しも、
心の奥底に狂気という化け物を飼い、
いつかその化け物が解き放たれることを
望んでいるところがどこかにあるのではないか
と思うのです。
狂気の中に我を忘れて没入し、
溶け入ってしまいたい、という、
狂うことへの欲望が。
制限や抑圧の多い日常では
決して表現されることのない、
ひた隠しに隠した欲望が、
狂気の中でのみ生き生きと現れ
思うままに表現される。
一部のアーティストやその作品には
そういうところがあると思います。
一方で、そういう化け物は
常の世界では最も恐れられ、
倦厭される存在でもあります。
決して現れてはならぬもの、
気配さえ知られてはいけないものとして、
自分にさえわからぬように
注意深く封印されています。
それに触れたら最後、
正常な自分を保てなくなる恐怖とともに、
毎瞬、膨大な抑圧のエネルギーを注ぎながら
心の奥底でその化け物と戦っているのです。
けれど、きつく抑圧すればするほど、
拒絶すればするほどに、
抑圧されたものは暴れ、深いレベルから
人生を揺さぶります。
認めろ！
解き放て！
我に身を委ねよ！
己の本当の姿を認めるのだ！と。
感情解放ワークの基本概念から言っても
そうなるのは当然のことで、
拒絶されたものは、受容されるまで
繰り返し現れるのです。
たとえそれが狂気だろうが絶望だろうが、
違いはありません。
どんな感情も、生命エネルギーの一部であり、
根本的には、スペクトルの違う同じエネルギーです。
よって、統合への道筋も他の感情と
違いはなく、同じようにして
統合させ、調和的に悪さをしない在り方に
収めていくことが可能です。
もちろん、へっぴり腰でおっかなびっくり
向き合おうとするのでは怪我をしますので、
しっかり肚を据えた度胸は必要だと
思いますけれどね。
私は、狂気の中に溺れるのは
逃避だと思っています。
セッションでもしばしば聞かれるのが
「狂っていた方が楽」という言葉。
思うに任せぬ辛い現実に苛まれ続けるよりは、
狂気の世界に身を委ねて恍惚の中に
溶けていた方がよほど幸せ、
という感覚ですね。
狂気というのは、ある意味、
心地良いのです。
狂気というエネルギーをマスターするには、
そこに逃げ込むような逃避先としては
いけません。
そのようなかかわり方をすれば、
中毒し、麻薬のように耽溺してしまうでしょう。
だから狂気を恐れるようになるのですね。
そのように没入するのではなく、
狂気の只中に在ってもそこで起こっていることを
主体の意識で体験し続けることができれば、
没入するよりはるかに奥深い狂気の可能性を
探求できるのではないかと思います。
そういうことができるようになるには、
少なくとも現実から逃避しているような
ヤワな精神じゃ無理でしょうね。笑
対峙しようとしているのは、
それをはるかに超えた、
膨大なエネルギーなわけですから。
いずれにせよ、
現実をどっしりと受け止められる人は、
狂気のエネルギーも自身の生命エネルギーの
一部として健全に扱えるのではないかな、
と思います。
これ故に、
私は人間の情念を否定することなかれ、
そのエネルギーを正しく導き、
健全に花開かせよ、と思うのです。
それは、恥ずべき禁忌ではありません。
自分の中にも、そんなものがあるだろうか？
とあまり認めたくなくて、常識や良識の
枠の中で小ぢんまりと収まっていたい方も、
ほんの少しでも、
自分の中にそういうものがあるという可能性を
認め、許してみたら、人生は驚くほど
可能性の領域を広げていくような気がします。
自分自身の生命エネルギーの様々なスペクトルを
少しずつでも健全にマスターしていけますように。