変容のプロセスを歩み切る力

人が大きく成長するときって、
内的にも外的にも、これまでの大前提が
大きく変化するときですよね。

外的要因によって成長するのは
たとえば学生から社会人になったとき、
結婚したとき、など。

それまでは、自分だけのために
生きていれば良かったけれど、
守る人ができたとか、社会に貢献することを
求められるようになったとか。

自分が責任を負う領域が広がると、
必然的に、その責任を引き受けられるような
自分に成長せざるを得ないわけですね。

一方、内的大前提が変わるというのは
どういうことでしょうか?

それまで見ないことにしてきたもの、
切り離して他人事にしてきたもの、
言い訳、誤魔化し、責任転嫁によって
作り上げてきた世界観が
根底から崩れてしまうようなとき、

そのことによって支えてきたすべてが
成り立たなくなります。

そのときに、
よりダイナミックな成長の可能性が
生まれるのです。

人は、しばしばこれを認めたら
自分を支える大切なものが崩壊してしまう
ということを意識、無意識的に知っています。

だから、注意深くそうならないように
何重にもバリアを張って、近づかないように
封印し、自分でも気づかないように
トラップ&トリックをかけて
平穏な世界が続くようにしています。

もちろん、そのことによって
様々な犠牲を払ってもいるのですが、
それでもなお、今のこの世界が
崩壊するよりはマシ、という
選択をしているわけですね。

けれど人生は、そうして足踏みをして、
成長することに抵抗していると、
そろそろ歩みを進めなさい、
と促す状況を設定してくることがあります。

だから潮時を感じた時は、
未知の領域に足を踏み入れることに
不安や恐れがあったとしても、
導きを信じて踏み出した方が、
その後の人生はスムーズでしょう。

けれど抵抗すれば、
色々な面で、ものすごく苦しくなります。

そういう成長は、甲殻類の脱皮のようなもので、
エビやカニが脱皮を拒んだら、小さくなった
殻の中で、ますます窮屈になった体を
持て余しながら、やがては窒息して
死んでしまうでしょう。

あるいは、窮屈な殻に合わせて、
食べるものを減らして、
成長しないように自分を制限しなければ
なりません。

何ともいびつな生き物になってしまいますね。

大きな変化、変容を前に
ものすごく恐がる人もいるし、
割とすんなりそこを通過していく人も
いますが、

大切なことは、
自分がどの方向に進みたいのか、
もがきながらも見失わず、諦めずに
努力し続けること。

その苦しさの責任を引き受けるのは、
自分しかいない、ということを
深く心に留めること。

自分自身で仕掛けた
トリック&トラップを見破っていくこと。

解放のプロセスがこじれていくとき、
こじれさせている張本人は、他でもない
自分自身なのです。

その自分が、一体何をやっているのか、
頭で理解するのではなく、
直視していくんですね。

解釈に走った途端に、
さらに深いトラップにはまっていくので、
ここはなかなかに際どいところです。

また、もがくあまりに無理やり
こじ開けようとしてしまうときも
あるかと思いますが、

こじ開けようとする動機を見てみれば、
早く解放して楽になりたいからですよね。

そこには、現状の苦しさへの拒絶があります。
つまり、早くそこから逃げ出したいわけです。

そういうときは、
ぐっとその状況の中に留まるくらいの気持ちで
命の呼吸とともにその感覚を受け止める方が
じわじわと解放されて行きます。

苦しいけれど、
その状況に居られる自分であるときに、
自分自身にグラウンディングする力が
育っていく、ある種の変容のプロセスを
通過しているのです。

実はこれは結構大事なことで、
困難の中にあっても落ち着いて
自分を保てる胆力を養っている
ことになるんですね。

こういう時の苦しさと言うのは、
逃げまくっているときの苦しさとは
質が違っていて、

空を掻くような手応えのない感じではなく、
何か確かなものに触れている感覚が
あります。

そしてそれは、
確実に身になっていくものなのです。

そうやって、少しずつ
人生の大転換を乗り切っていく力を
つけているんですね。

解放や変容、転換などという言葉は
一気に何かが変わっていくというイメージを
持っている方は多いかもしれません。

そういうケースも確かにあるけれど、
実際はじわじわと苦しいプロセスを歩む中で、
気が付いたらすごく変化していた!
ということの方が多いのではないかな、
と思います。

こういうことが知られていないから、
変容と言うのは一気に何かが起こることなのだ
と思って、そういう体験を追い求めている
人が多いのかもしれません。

私は良くクライアントさんに、
「近道はありません」と言いますが、
積み重ねるしかないのです。

そういうプロセスを歩み切る
力もないのに、大層なものになれるとは
思わないことですね。

と、ちょっと厳しいことを言ってみました。

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