ここのところ、
母のこと、家のこと、日常の諸々を
綴ることが多くなっていますが、
自分の心の内に湧き起こることを
日々の出来事とともに書き記すことで
心の整理をしているところもあるので、
読者のみなさんに役に立つかどうかは
さておき、綴っていこうと思います。
それが、これから親御さんなど
お身内を送る立場にある方や、
既に送られて、まだ心の奥に
整理できないものを抱えていらっしゃる
方などに、気付きがあったら幸いです。
今は、店の方の古い帳簿や備品など
今整理できるものが一旦片付いて、
プライベートな家の空間にあるものを
少しずつ片付けています。
厖大な生活用品や趣味で集めたもの、
祖父母の様々な遺品、家族の写真、
父が入院していた時の領収証や診断書、
父の葬式の時の葬祭費の記録、
毎年の年賀状、手紙の類などなど
ありとあらゆるものが出てきます。
戸棚の扉を開ける度に出てくる
それらのものに、いちいち手を止め、
あの時はこうだったな、と
自分の記憶を辿ってみたり、
私の知らなかった出来事の事情など
こういうことだったのか、と
思ったり。
タイムカプセルを開けるような
気持ちになっています。
昨日は、父と母の結婚証明書と
結婚式の記帳、新婚旅行で行った
徳之島のホテルの領収証やチケット、
写真などが出てきました。
まだ私も弟たちも生まれていない頃の
記念の品々を見ながら、父と母の
これから始まる結婚生活への思いを
感じていました。
当時はまだ健在だった祖父母の
趣味のものも一緒に出てきて、
芸事も粋に嗜んでいた人だったので、
どこか風流を感じさせるその時代の
品々を眺めていました。
そういう物に触れると、
何となくその時代に生きた人の意識や
世間の空気などを感じるものですね。
明らかに、今の時代とは違った
何とも言えない風情があります。
そういう、しっとりとした情緒
というか、洗練された艶っぽさの
ようなものは、今の時代には
ないですね。
また、母の遺品の中で結構多かったのが、
料理のレシピを書き留めたノートで、
今だったらネットですぐにレシピ検索
してしまうのですが、
テレビなどで見たレシピをあれこれ
記したものがすごく多かったです。
母は忙しい中でも結構しっかり
食事を作ってくれた人で、
母のおいしいご飯が私は大好きでした。
兄弟の中でも、ずっと母と暮らしていた
私は、一番母の手料理を食べてきた
人間ですね。
臨終のときに伝えた感謝の言葉も、
一番はおいしいご飯を毎日ありがとう
でした。
それから、裁縫も得意だった母は、
編み物もよくしていました。
家族全員に手編みのセーターを
編んだりしていましたし、
遺品の中にも編みかけのセーターや
毛糸がたくさんありました。
何となく、その柔らかな手触りが
母の記憶に繋がって処分しづらく、
さてどうしようという感じです。
そんな感じで、箱や棚の扉を開ける度、
その時代時代の父母の姿、家族の形が
現れてきて、なかなか整理は進みません。
今の時代は、写真など、生々しく
当時の姿形を残せる媒体があるので、
昔よりもずっとその時代の情報を
多く残していけます。
そうした記録を辿りながら、
人の一生の出会いと別れ、喜怒哀楽に
触れていくと、何とも不思議な
気持ちになります。
写真の中の、若かった父や母、
幼い弟、まだ新しい、古い時代の家、
かつて在った建物、街並み。
今は亡き面々の様々な表情。
私もまた、それらのもの、人たち
と同じように、記録の中の存在
になっていくのでしょう。
そういう不思議な時空間を感じて
今というこの瞬間を思うと、
この人生とは一体何だろう？と
それまで当たり前に生きていた
日常の感覚が、何だか言いようもなく
妙な感じになるのです。
これをどう解釈しようかと
あれこれいじり回すようなことはせず、
淡々と受け止めていますが、
多分、今こう言う感覚になる必要が
私の人生の中にはあるのかも
しれませんね。
それまでの日常の流れと少し離れて
改めてこの人生を別の眼差しで見る
良い機会です。
じっくりと、変化している
人生の質感を味わっています。