ものごとを理解するのに
どのレベルで見ているのかで、
見えてくる景色、受け取るものが
格段に違ってくるということを
つくづく思います。
昔、韓国ドラマで
「チャングムの誓い」が流行った時、
知り合いから勧められてDVDで
見たことがあったのですが、
その中で、幼いチャングムが
師匠に「朝、水を持ってきなさい」
という指示を受けるお話があります。
朝になって、チャングムは師匠に
顔を洗うための水を準備して
持っていきますが、師匠はそれを見て
すぐに下げさせます。
翌日も、師匠は同じ指示をして
水を持ってこさせるのですが、
チャングムは今度は、飲むための水を
用意して持っていきます。
すると、師匠はまたしてもそれを見て
何も言わず下げさせます。
その水もまた、師匠の意図には
叶わなかったのです。
そうして何日も何日も
同じことをさせ、チャングムは
彼女なりに一生懸命考えて
様々な水を用意して持っていくのですが、
ある時ハッと気づくのです。
ただ水、と言われただけで
どんな水を持っていくのか、
その時のその人の意図をちゃんと
汲み取らなければならない、
ということを。
それに気が付いて、
翌日持って行った水は、
師匠の心に適う水でした。
やっとわかったのね、
という表情の師匠と、
満面の笑みのチャングムが
印象的なお話でした。
同じようなことは
どんな仕事にも言えること
だと思うのですが、
たとえば、
音楽家が楽譜を読んで
演奏するとき、
初心者は楽譜の通りに
間違えずに演奏できることが
まず第一で、
それができるようになったら、
今度は楽譜の解釈の段階に
なるでしょう。
作曲家がその楽譜に込めた
意図を自分なりに解釈して
表現していくのです。
だから、同じ曲を演奏しても、
演奏家によって様々な表情が加わり、
そんな解釈もあったのか！という
個性が生まれます。
一つの問いかけを投げかけれられたとき、
それをいかに返すか、ということには、
受け取った自分の在り様が反映されます。
何をどう見ているのか、というのが、
誤魔化しようもなく、その応答に
表れてしまうのです。
はいはいはい、やればいいんでしょ、
はい、やりましたよ。
みたいな応答の仕方であれば、
問いかけの極表面的なところしか
見ることはできないでしょうし、
やらされた感満載で、創意工夫も
ないでしょう。
一方、問いかけられた言葉の理由を
自分の中で深く受け止め、反芻し、
なぜそのことが言われたのかを
探求するならば、それなりに
気付くことがあるでしょう。
禅やその道の師匠という方々は、
そのようにして弟子を導きました。
師匠は弟子の在り様を見て、
その時必要な気付きに自ら至るよう、
問いを通して弟子に考えさせたんですね。
今どきの学びの方法は、
問題には決まった答えがあって、
その解き方を覚えて
定型の答えを導き出すような
やり方を訓練しますが、
これでは自ら考える力は
育ちようもありません。
故に、大人になっても、
解き方を教えてもらって、
その業界、その世界で必ず
「正解」が出せるようなメソッドを
求める人が溢れているのです。
本来は、問われる前に
自ら問いを見出し、探求する
というのが自然だろうと思います。
自分の内から湧き上がる
クリエイティブな創造性のエネルギーが
湧き上がるままに、
これは何だろう？
どうやったらできるんだろう？
どうしてこうなるんだろう？
などと探求心が自らを突き動かしていきます。
そうやって、楽しみながら
知ることの喜びを体験していく
わけですね。
今、あなたがしている学びは、
知ることの喜びとともに
あるでしょうか。
受け身で出された課題を
ただこなしているだけでしょうか。
どのような学び方をしているにせよ、
それはあなた自身の選択です。
自分がどんな人生を歩みたいのか。
今の在り方がそれに適っているのか、
良く問うてみることです。