人の心は一筋縄ではいきません。
表に見せている顔と、
奥にある顔は全然違います。
人の心に関係するお仕事をしている人
でなくても、日常的にそういう場面には
みなさん接しているでしょうから、
それは誰でも感覚的に分かると思います。
ただ、本当に深く深く人の心に
触れて行くことをしていくほどに、
そんな言葉では到底言い表せない
複雑怪奇な構造を見せられることが
しばしばあります。
人にも自分にも誠実で在ろうと
心掛けている人でさえ、
自分で自分を騙すことを完全に
止めるのは、相当に難しいこと
でしょう。
騙すつもりはなくても、
無意識にそういう働きが自動的に起こり、
勝手に偽りの自分をかぶせ、覆い、
本当の自分を隠してしまうのです。
そして当人でさえ、
その偽りの仮面が本当の自分の顔
なのだと思って生きているので、
その下に別の素顔があることに
気づかないのです。
そんな仮面をいくつも被りながら、
どれが自分なのかがわからないまま、
何となく今を生きているのが
私たちなのでしょう。
セッションで、クライアントさんに
様々な問いかけをしながら、
言葉にならない微妙な変化、兆しを
読みつつ、
今返ってきた答えが仮面からのものなのか、
その人自身の真実から来ているのか、
それを識別する糸口を探っています。
真実と偽りの境が割とはっきり
捉えられる時もあれば、
微妙な違和感やズレた感覚などが
あるような気がするけれど、
確信が持てないときもあり、
様々なアプローチを試しながら、
浮き上がってくる仮面を見破っていきます。
ときには、
本人がその真実を目の前にしても
受け入れることに抵抗するときもあるし、
直前までクリアに意識を保っていたのに、
核心を突き付けられた途端に
意識が飛んだり、混乱して
訳が分からなくなったりすることも
あります。
結局、その時に問われるのは、
自分自身の真実に直面することに対して
どれだけ肚が決まっているかな?
ということなのです。
これはもう何度も繰り返し
お伝えしてきていますが、
口先だけでは何とでも言えるのです。
けれど、そこまで受け入れ難いものに
対峙するということの現実的な苦しみを
感じ、受け止めることに本当に
Yes!と言えるのかどうか。
そこが全く実感なく、
別のものになっている人が
多いのですよね。
それが、自身の内側が分離している
証拠であり、その状態では、
真実の声など受け取れようはずも
ないのです。
対岸の火事として見ている時と、
まさにその渦中に入って
その現場に当事者として立つということは
同じではありません。
そのことがわからないということ自体、
まだ直面してすらいないということです。
私たちは、感じる感覚をあちこち閉ざして
自分には恐れはないとか、苦しくない
と思っていたりします。
けれどそれはトリックです。
本当に恐れや苦しみがないのではなく、
ただ感じる感覚自体が壊れている
だけの話。
その感覚がクリアに開いている状態で
恐れや苦しみがないと言えるのかどうか。
それが肝心なのです。
感じる感覚が正常に開いているのか、
まずはそのチェックからしていく
必要があります。
何らかの原因で感じられていない
ことがわかったら、
今度はその原因を特定し対処し、
感覚を取り戻していきます。
すると、
感じないで済んでいた、あの耐え難い
恐れや苦しみが戻ってくるわけですね。
それは、かつて受け止められなかった
非常に濃密な感情のエネルギーなので、
それが受け止められる態勢の準備を
同時進行で整えていきます。
これができないと、
真実に出合うことが出来ません。
真実に触れた途端に
気が狂ってしまうのでは、危なすぎて
とても扉を開く許可が自分に出せません。
ガチっとロックがかかって、
にっちもさっちもいかなくなります。
自身の心を掘り下げていく中で、
思いもしないようなものに
出くわした時、咄嗟に覚悟ができる人は
そう多くはありません。
随分向き合ってきた人でも、
何度もチャレンジして、
ようやく覚悟できるということも
珍しくはないですし、
向き合い始めたばかりの人であれば、
なおさら時間がかかるケースが
多いです。
というのは、自分自身に踏みとどまる
だけのエネルギーがまだなかったり、
自分を信頼し、支えられる体勢が
できていないからです。
けれども、
たとえ初めてであったとしても、
一度で肚が決まる人は、
もう本当に後がない人です。
今覚悟しなくても
すぐに死ぬわけではないくらいの
余裕がある人は、なかなか
覚悟はできません。
今を逃したらもう次はない、
という切羽詰まった状況に在る人は
必死ですし、見栄もプライドも
かなぐり捨てて生きる道を掴もうと
しますから、それだけの覚悟が
できるんですね。
どれだけ自分を偽って誤魔化しても、
本当に真実を基盤としなければ
平和や幸せはないのだと心底
骨身にしみてわかった人は、
そこから変わっていきます。
心の奥底の開かずの扉を開くのは、
それなりの心構えが要りますね。