私たちが人生で味わう辛い思いの一つに
未練や後悔があります。
先日も未練について少し
書かせていただきましたが、
これらはどちらも、過去に囚われた
心の状態です。
つまり、今この瞬間を生きていない。
なぜ過去に囚われているのかと言えば、
一番は、目の前のこの現実を
受け入れることが辛すぎるから、
それを拒絶して、逃避しているのです。
目の前の現実を受け入れてしまったら、
過去にまだあったはずの可能性を
失ってしまったことを
認めなければなりません。
二度と取り返すことが出来ないものほど
貴重に思えるものですが、
失ったものの方が良かったように見えて、
今この瞬間の豊かさを受け取れなくなって
しまうのですね。
けれど、失ったものに
心を囚われている方を見ていて
しばしば思うのは、
失ったと思っている可能性を得ていたとしても、
おそらくその人はやはり失った時と同じ感情を
どこかで味わうことになるのだろうな、
という気がするんですね。
というのは、その時に浮上している
喪失感や悲しみ、無力感などは、
未完了の感情のエネルギーとしてその人の中に
それ以前から存在していたものなので、
それ自体を完了させない限り、
どこかで必ず同じものを味わう出来事を
引き寄せてくるからです。
だから、結局どちらを選んでも同じこと。
大切なのは、どこにいるか、
何をしているかよりもさらに根源的に、
その時そこで、自分はどのような在り方を
しているのか、ということであるような
気がします。
自分自身に対して、深く深く向き合い、
声を聞き、正しく応えることをしていたら、
その人はどこにいて何をしていても、
今自分の居るところを正解に
していけるのではないかと思います。
そしてその正解は、
地に足の着いた自分で居られて、
他のどんな可能性よりも最高の居場所
であるでしょう。
地に足のつかない夢想は、
どんなに素晴らしいビジョンであっても
絵に描いた餅であり、それを実際に
生きることはできません。
ビジョンとは、実現してこそのものであり、
自分自身と乖離しているのは、ある意味
現実逃避でもあるのではないでしょうか。
ビジョンを実現するということは、
それをこの自分が生きるということです。
であるならば、どうしてこの自分を
否定し、無きものにしたところに
ビジョンの実現があるでしょう。
だからこそ、
いついかなるときでも、
自分から離れてはならないのです。
自分を疑い、不信を抱き、
見捨て、否定したとき、
それはよからぬ者にとっては
つけ入る最高のチャンスになります。
そのため、彼らはその人が
自分自身から離れていくように、
ありとあらゆる手を使って
不信を抱かせ、絶望させ、
見捨てさせるのです。
そうしてその人を導きから切り離し、
もっと良い道を教えてあげよう、
私と取引しよう、と持ちかけるのです。
声をかけてくる存在が
良い存在なのかそうでないのかを
見極める基準は、
その存在の話に乗って、
自分自身とのつながりが
より深まっていくのか
そうではない方向に行くのか、
を見ていくと良いでしょう。
自分で考えず、判断しないで済む、
という気楽さ、責任のなさは
危険であるということを
心しておくべきです。
誰が何と言おうと、
最終的にそれに従ったり拒絶する
「判断を下した」のは自分です。
故に、その結果を引き受ける責任があるのも
自分を置いて他に在りません。
結局、よからぬ者に誘われたから
と言ったところでそれに乗ったのは
自分であり、その時点で契約成立なんですね。
そこは責任転嫁できないところです。
自覚のない人が多いですけれどね。
自分と離れて、
いかなるビジョンの達成もあり得ません。
ビジョンは、自分自身の深奥から
やってくるものであり、
それと対話する中で己を知り、
成長し、より精妙に高まっていきます。
そこには、何者も介入する余地は
ありません。
ただそれは、自分と内なる神との
１対１の対話なのです。
その関係性の軸がまず通ったところに、
ビジョンの創造が始まります。
そこに別の存在が介入した時点で、
そのビジョンはすり替えられています。
自分と深奥にいます者との対話に
自信がないと尻込みされる方も
多いのですが、
それは人間としてこの人生を歩むうえで、
絶対に欠かすことのできない要素
であろうと私は思います。
自分にできるはずがないという
自己不信は、きちんと向き合って
癒し、統合しておきましょう。
今この瞬間に深く根付いて、
この自分を通して、
生命の神秘を体現されますように。