武道や伝統芸能などでは、
まず「型」を習いますね。
型を極限まで極めた達人の動きは
型を越えて美しく、見ているだけでも
自分の中の何かが整って行くような
清々しさを感じます。
私はそういう型を学ぶような世界に
身を置いたことがないので、
あくまで外野からつらつら思ったことを
書いてみたいと思います。
ド素人のたわごとくらいに思って
読み流していただければと思います。
型には、先人たちの積み重ねてきた
膨大な情報が凝縮されていて、
それを体現することで、自分の中に
それらの叡智が有機的にインストールされる
優れた叡智なのだと思います。
型を身に着けるとき、
人によっては苦手だったり
すごく得意だったり、
受け取る側の要因で型の入り方は
一様ではありません。
それは、自分の中のデコボコした歪みが
型に触ったりブカブカしたりして、
やりにくく感じるのでしょう。
ある人にとってはいとも簡単に
できてしまうことも、
別の人には相当に練習しても
なかなか身に着かないというのも、
目指す理想の型を実現するための要素の
欠乏や過剰などを表しているのだと思います。
それを、型をやり込むことで、
自分自身の深いレベルまで落とし込み、
矯正していくのが修練ということなのでしょう。
修練を通して、叡智がただの情報ではなく、
有機的に機能し、稼働する状態に繋がれ、
設定されるわけです。
よく、心・技・体と言いますが、
型はそのすべてのレベル、もっと言えば、
型に込められた真意を受け取る力がある者には
恐らく霊性の部分にまで及ぶ叡智が
明かされるのだろうと思います。
エッセンスの抜かれていないヨガは、
まさにそういうことを目指していますよね。
だから、長い歴史の中で受け継がれた
型を深いレベルで体現できるようになったとき、
その人は、先人たちの獲得してきた叡智を
自らの内に、時空を超えて映し出している
と言えます。
何故その形なのか、
何故そのような動きなのか、
何故そんな呼吸をするのか、
何故、そうでなければいけないのか。
何故、何故、何故。。。
その一つ一つに、
奥深い、実証的な意味があります。
長い歴史の中で
意味のないものは受け継がれることはなく、
淘汰されるはずだし、
避けて通れない意味があるならば、
消えたとしても、またその流れの中で
誰かが復活させているはずだからです。
だから、長く受け継がれて来たもの
というのは、必然の価値があるのです。
その道を極めたければ、型をやり抜いて、
先人たちと時空を超えた対話を深めて行けば
きっと最短ルートで達人に至れる
のかもしれません。
そしてまた自分が、
先人たちの築いてきた叡智の上に、
まだ誰も開いていなかった扉を開き、
一門総力の成果を積むのかもしれません。
どんなレベルで型を体現しているのか。
型に示される方向性の先に、
どれだけのものを自分が汲み上げたのか。
先人たちからの挑戦でもあり、
託されたメッセージでもあるのでしょう。
そうやって型と対話することは、
音楽家の方が楽器と対話するのと
似ているかもしれません。
その場合、型である楽器のポテンシャル
というのも重要な要素になってきますが、
となると、
型にもそれ自体のポテンシャルというものが
ある、と言えるのかもしれません。
修練する者は、型によって自身の可能性を開拓し、
型も、それを修練する者によって
自らに叡智を蓄積するという
相互の関係性があるのでしょうね。
もっとも、古くから連綿と受け継がれてきた型は、
そうそう一個人によって本質が大きく
開かれることはないのでしょうが、
もしそれができるとしたら、
超越的な天才なのでしょうね。
そして、そのような天才が現れた後は、
大きく開かれたその道を、
後を追う者たちがまた補強し、
強化していくのでしょう。
そんなことを考えていたら、
お釈迦様なんかは、飛び抜けた超越的な天才で、
お釈迦様が開いた道を、多くの人たちが
求め、探求し、そこに至るまでの
無数の型を生み出してきたのだろう、
なんてことを思いました。
どれだけの人が、彼の境地を体現するまでに
至ったのか、そして、そこに至れないままに
累々たる屍が積まれて行ったか。
けれどそれでもなお、
お釈迦様がこの世界で開かれたものの意味は、
言い表せぬほどに深いと思います。
型とはまさに道で、
道は必ずどこか、あるいは何か
に通じています。
道を歩む中で、
どれだけ自分が何かに通じることの意味を
理解できるかが、歩みの深さを
決めるような気がします。