人間、できている、わかっている、足りている
と思えばそれ以上は求めないもので、
それが良いときもあるし、悪く出るときも
あるものです。
もちろん、足るを知る、というのは
貪りを遠ざける意味でも大切なこと。
ただ、自分ができている、わかっている
と思えばそれ以上を見ようとはしなくなり、
気づけなくなるものもあるし、
人の言葉も受け付けなくなったり、
技術や能力の向上がそこで止まる
というのも確かにあるでしょう。
だから謙虚さが大事と言われるのでしょうが、
なぜそれが大事なのかという
本質を置き去りにして、
形だけ謙虚なふりをしているけれど、
プライドが変に高い人もいますね。
いずれにせよ、どこを落としどころにするかは
本人が自分の人生にどれだけ満足しているか
だと思うので、自身の人生を総合的に見て、
自分で決めるところだろうとは思います。
人生を総合的に見て、というのは
どういうことかというと、
人生からのメッセージは繰り返し
差し出されているにもかかわらず、
本当は見るべきところで、
本人がスルーし続けているとき、
人生にはどこか生き辛さ、不調和が
生じています。
そういうとき、本人はよもや
その生き辛さが、自分が問題を感じていない
ところに原因があるとは露とも気付いていない
ということがよくあります。
けれど、良～く人生を振り返ってみれば、
多分、お知らせは何度も来ていたと思います。
最初はそれとなく、時には
非常にダイレクトに伝えられていた
にもかかわらず、いつも流していたり。
あなたを大切に思う人から、
改まった言葉で真摯に伝えられた
耳の痛い言葉に不快感や恐れを感じて
いまさらそんなことは自分だって
分かっているさ、とか、
自分はそんなんじゃないとか、
反発して耳をふさいで遠くにその言葉を
放り投げていなかったでしょうか。
あるいは、そうしたことさえ、
意識からは消し去っているのかも
しれません。
そんなあなたの様子から、
周囲の人も、やがて何も言わなくなって
表面的な付き合いになったり、とかね。
まぁ、何かを言ってくる人にも
色々あるので、すべての言葉を
受け入れなければいけないとは
私自身も思ってはいません。
ただ、そこに聞くべきものがあるのかどうか、
何を受け入れ、何を捨てるのかを
注意深く吟味できる、ニュートラルな
姿勢は大事だろうと思います。
とんでもない、全く思い当たらない
と思うことでも、本当に無いだろうか？
ひょっとしたらあるかもしれない、と、
最初から拒絶しないで自分の内側を
確かめてみるスタンスができるのと
できないのとでは、全然違いますからね。
無いとは思っているけれど、もし万が一、
本当にそれがあるなら、気付けるように、
と思って精査したときに、ものすごく
大きな人生の鍵を拾うことがあるからです。
無いと思えば、そういうものは見えないし、
見たくないと思えば見ないですから、
本人の認識には存在しなくなります。
けれども、第三者の目から見たら
明らかに見えているものもあるわけで、
自分に死角など絶対にない！と言い切れる人
以外は、やはり人から言われた言葉は
吟味したうえで有効に使うのが
良いだろうと思うのです。
ここで、念を押しておきたいのは、
何も痛くない腹を探って痛みを作り出せ
って言ってるわけじゃないのは
ご理解いただけると思ってます。
何も無ければ無いでいいのです。
本当に無いのかもしれないし、
今の自分には必要ない（タイミングではない）
のかもしれないし、
相手の人があなたに何かを投影して
見ただけなのかもしれないし。
ただ、何かあるのなら、
気付いて受け取る態勢だけは
整えておきたいよねってことです。
それが謙虚である、ということの
本意だと私は思っています。
そういう意味で、
本当に人の話を聞くというのは、
自分自身の内側との対話が同時に
できてないと、不可能なことです。
相手の言葉に対して、
自分が何を感じているのか、
相手が自分の心に投げ込んだ石が、
自分の心に巻き起こすさざ波を
じっと見つめる眼差しが
必要だからです。
相手の言葉が導こうとしている
あなた自身がまだ気づいていない死角に
意識を向けるとき、多かれ少なかれ
不快な感覚がするものです。
その微妙な抵抗、不快感がありつつも
死角を見るには、見ようとする意志は
必要です。
無意識だと、そのままつるっと逃げて
無かったことになってしまいますから。
逆に、不快感、抵抗感があるということは、
見るべきものが確かにそこに在る
ということの証でしょうね。
何かあるのはわかっているけれど、
でも今はやらないっていうのも
もちろんアリですけどね。
結局は、自分次第、ということで。