「幸福否定の構造」について

最近、そわか数珠のそわかさんから教えていただいた
こんな本を読んでおります。

「幸福否定の構造」(笠原敏雄著、春秋社刊)

やっと読み終えたところなのですが、
実地の臨床経験を積み重ねた中から
構築され、緻密に検証された理論は、

たとえそれが世間一般の常識とはかけ離れ、
ひっくり返すようなものであったとしても、
圧巻の迫力と説得力があるな~
と感じました。

著者がこの本の中で扱っているのは
分裂病や心身症の方たちですが、

人は、幸福になることを否定するような
構造を心の中に持っている。それがゆえに
幸福を感じられるような状況に置かれたとき、
それを強烈に拒絶するような反応を示す、

という理論は、そうした病を持っていない人
にもしばしばみられる傾向であるな、
と私自身のセッション経験からしても
非常に腑に落ちるところがありました。

なかなかすんなりと理解するには
私には少々難しいところがある本なので
ざっと読み流した感じですが、

セッションでも、核心に近づけば近づくほどに
熾烈な抵抗を受けることはよくあるし、

しかも本人には抵抗をしている自覚は
皆無であったり、そのプロセスでの
自身の発言の記憶がしばしば消えている
という経験も確かにあります。

分裂病患者が、自分が普通であることを
知ってしまうような出来事があった時、
(本来それは嬉しいことのはずだが)
それを激しく否定し、

自分自身の意識に、「自分が異常であること」を
証明するような、常軌を逸した行動を取る
という読み方は、非常に興味深かったです。

私のサロンに見える方たちはそうした
心の病の病歴を持っている方ではありませんが、
(基本そうした診断のある方は
私のサロンでは対象外です)

著者の笠原氏の理論を適用して
改めて見てみると、中には
まるで自分が(ネガティブな意味で)普通ではない
ということを証明したがっているのではないか、
と思えるような方も、確かにありました。

そして、明らかにその方は、
深いところでは自分の立ち位置や
アイデンティティが、自分がそのように
作り出したもの、ということを
知っていましたし、

私がその方の意識を読む限り、
明らかに自身が自分の人生に戻ってこなくても
良い状態を維持するための芝居である、
という感触がありました。

言ってみれば、「居留守」なんですね。

そういう気配がありありとする。

でも、本人はその自覚が全くなく、
どんな問いかけをしても「わからない」
と返してきます。

でも深いところではちゃんとわかっている。

やり取りの中で、ときたま「わからない」
ことにしている意識がしくじることがあって、
そのぼろが出たところを追求すると、
しどろもどろになってさらに奥に隠れる
ような状態になって閉ざすんですね。

そして、セッションから意識が戻ってくると、
その部分の記憶はすっぽりと消えているのです。

何が何でも自分の人生には戻らないぞ!
と固く誓って、本体は遠いところに逃避行
しているような感じです。

こうなると、自分自身の人生に戻って
自分本来のパワーを取り戻すことを目指すのが
私のセッションなので、セッション自体が
成立しません。

本人としては、一番進んではいけない方向に
進ませようとされるわけですから、
「ヤバいヤバい」と猛烈に逃げまくります。

こんな状態ですから、当時は私も
幾度となく「あなたは一体どうしたいのか?」
と問いただしましたが、表面的には
自分の人生を生きたいと答えるものの、
最終的にはセッションには見えなくなりました。

その方には様々なことを学ばせていただいたので、
感謝しかありませんが、とても印象に残る
不思議なケースでした。

そんなことを思い返しながら、
他にも大なり小なり、この理論を通してみると
腑に落ちる様々なケースがありました。

自分が愛されていることを知りたくない。
許されているなんて思いたくもない。

怒りと憎しみで人生を支えてきたのだから、
今更それを変えたら、今までの苦労は
なんだったのだろう。。。

そんな言葉を、いったいどれだけの人の口から
聞いたことか。

幸せになるために、愛されたいがために
あなたはセッションを受けているのでは
ないのか。

自分が決めさえすれば、いくらでも
そこへの道は開くというのに、
なぜ幸福を否定するのだろう。

大なり小なり、私たちの中には
この構造があります。

笠原氏はこの本の中では、
ではなぜ彼らはこれほどまでに
断固として幸福を否定するのか?
という根本については何も述べていないけれど、

セッションでは、その根本に触れられると、
その人はそれからものすごい勢いで
変化し、ハートが開いていきます。

多くの場合は、一度ではなく、
段階を踏んでそうなっていきますが、
なかなかその核心に触れさせてもらえない
ケースも多々あります。

いずれにせよ、なかなかに興味深い
示唆をいただけた本でした。

興味のある方はぜひご一読を。

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