許し難い自分を許す苦しみ

時に私たちは、人生の中で恨みや憎しみなどで絶望的なまでにこじれてしまった関係を体験することもあるかと思います。もうどうにも修復できないだろう。このままこの気持ちを抱えたまま人生を終えるのだろうな、と思っている方も少なくないでしょう。

けれど、どんなに絶望的に見えても、感情解放ワークでは和解し、癒しと統合にまで持って行くことは確かに可能です。けれどそれにも条件があって、自分が受け止め難く逃げている苦しみの感情の責任をしかと取ることが絶対条件になります。

苦しみの感情の責任を取るというのがどういうことなのかというと、相手が絶対に悪いと思えるような状況でも、まず自身の内に生じた苦しみを、相手のせいにせず身体と心ともに受け止めます。

これだけでもかなりきついことが多いのですが、ここが第一関門です。

その次に、あまりに苦しいが故に諦めたり切り捨てたりしてきた本当の思い、言葉を吐き出していきます。その願いを持っているとキツイから、諦めて終わりにしようとしてきたわけです。そこに戻って自分の隠してきた本音を表現するのです。

これをすると、心の奥で絶対に解けない氷のようになっていたしこりが融け始めます。叶わない願いを認めるのは辛いかもしれませんが、その辛さから逃げずに在るがままに生きるのです。

ここまでが、相手との関係性の中での自分の責任になります。

けれど、魂のレベルで見たときに、さらにその続きがあります。そもそもなぜ自分はその相手とこんな風な関係になってしまったのか、という出来事が差し出しているメッセージを受け取り、応答しなければならないのです。

あなたが大嫌いなその相手は、あなた自身のある側面を忠実に再現して目の前に見せてくれています。あなたはストーリーの中で彼らを「あれはアイツであって私ではない」と見ていますが、あの嫌な側面がまさに自分のものであると深く認め、一切の反発や否定のないところまで統合するのが次の段階です。

だから、自分の気持ちを受け止めただけでは、まだ半分なのです。

この気づきに至るために、感情解放のワークでは意識を相手の中に移動させて、相手の苦しみを生々しく体験し、受け止めていきます。このプロセスで、実に様々な気付きが起こるでしょう。

受け入れ難い側面と向き合うだけでも、魂の歴史的には一大事件です。あなたは長いことこれができずに何百年も逃げ、誤魔化してきたわけです。今、それほどまでの大きな方向転換が起ころうとしているのです。

自身の醜い側面に直面するのは、正直、吐き気がするくらいの思いがするかもしれません。深いところでは分かっているのに、「これは私ではない」とどうしても否定したくなってしまうでしょう。

ただ、これが人間のパラドックスなのですが、否定した要素はどんなに気を付けていても人生にそれが再現されてしまうのです。

つまり、醜さを否定したとしたら、その醜さがあなたの中に抱え込まれ、ふとしたタイミングで嫌というほどそれを思い知らされるような出来事を体験してしまうのです。

惨めでありたくなくて必死でそれを避けようとしているのに、どういうわけかいつも惨めで在り続けているというのがこの典型でしょうか。

逃げている限り、あなたはますます惨めで醜く、卑怯者で在り続けるでしょう。

人生は、この醜さを受け止められるようにそれを浮上させる出来事を引き寄せてきます。人間目線ではこの状態は苦しみの極地ですが、魂のレベルではその出来事は解放のチャンス以外の何者でもありません。

これをチャンスと捉え、何百年もできなかったことを為し遂げるまたとない機会にするのかどうか。あなた自身が決めなければなりません。

ワークではしばしばこの段階が、相手の意識の中に入って苦しみを受け止めるプロセスに重なります。

このプロセスが完全に完了すると、相手にはいかなるわだかまりの感情もなくなり、深い気づきとともに、自分の中の奥深いレベルで実際にエネルギー的な変容が起こります。

逃げ続けている逃亡者は、見るからにみすぼらしく惨めで卑屈に見えます。けれど、最も受け入れ難い自身の側面を受け入れた勇気ある存在は、もうその片鱗もない程に凛々しく謙虚で美しいのです。

誰かや自分を「許せない」という思いがもしあなたの中に在るのなら、あなたには責任を取らなければならない苦しみの感情があるのであり、あなたは今現在、そこから逃げているのだと言えるでしょう。

そしてあなたの現実が複雑で深刻なほど、対処すべきその緊急度は高いのです。

特に自分を許せないと思っている方は、罪悪感によって本来受け止めるべき感情を紛らわせて逃げているので、その後ろめたさを終わらせたいのなら、自分を許すことによって浮上するだろう苦しみを受け止める必要があります。

ここを越えられたとき、顔を向けられなかった方たちに赤心の謝罪をすることができます。そうした謝罪のみが受け取られるに値する謝罪なのです。

ただ自分の苦しみから逃れたいがために「許して」というのとは、全く違いますよね。

これによって、絶望的なまでにこじれてしまった関係も完全なる調和に導くことができるのです。

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