「今この瞬間」のすべてを否定しない在り方

「目覚め」や「悟り」などのキーワードがあちこちに溢れかえっている昨今、「今この瞬間」に居ることが大切だということは、多くの方々に知られていることだと思います。

けれど、なかなか「今この瞬間にいる」というのは難しいことだとつくづく感じます。正確に言うと、「今この瞬間に根付いている」ということなのですが。

前者の「今この瞬間にいる」というのは、レナードの言う目覚めへのツーステップの第一ステップになり、これはさほど難しいことではないとレナードは言います。まぁ個人的には、一瞬たりともプレゼンスに居られなかったときもある私なので、レナードの言葉に同意しかねる部分はあるのですけれどね。

そして後者の「今この瞬間に根付いている」というのは、目覚めへの第二ステップになります。これは、抑圧された感情の解放やエゴとの正しい関係を築くなどのマスターレッスンが含まれるので、段階を追ったプロセスになります。

今この瞬間に居るだけでなく根付いているには、非常に注意深く意識を観察する習慣が必要です。私たちは普段ほぼ無意識にあれこれ思考し、また行動しているので、その無意識の部分のすべてが意識に登っていなければ、根付いているとは言えません。

今年4月のリトリートで、表現は違ったかもしれませんが、レナードは「すべての無意識を意識に浮上させる」と言うようなことを言っていました。

凡人の私からすると、そんなことが果たして本当に可能なんだろうか?と途方に暮れる思いがしますが、プレゼンスに根付くというのはそういうことなのでしょう。

無意識に思考すること、無意識に行動すること、無意識に身体から離れること。24時間すべての時間で全くこれがないというのは、まさに超人だな、と思ってしまいます。それだけ、私たちが本来の「存在」から離れてしまっているのでしょうね。

以前、週末のワークショップだったかリトリートだか忘れましたが、レナードが「私を見ていなさい。一瞬でもプレゼンスが途切れることがあるかどうか」と言うようなことを言って、椅子から立ち上がり、周辺を歩き、また座って見せたことがありました。

私には、どの瞬間もごく自然に同じ密度で意識が保たれているように感じられました。当時はそのくらいしかわからなかったのですが、ヨガを習っている今、このときのことを思い返すと、すごいことだと改めて思います。

私が習っているガネーシャ・ギリ先生のところのヨガでは、意識操作も非常に重要な要素になるのですが、私がポーズをやっても、まず最初から最後まで均一な意識を保てることなど皆無です。必ずどこかで意識の揺らぎがあったり、瞬きの前後で意識が変わってしまったり、思考が入ったりするからです。

そして今年のリトリートの時も、レナードはプレゼンスに在るときとそうでない時の違いを見せてくれました。このときは、ステージ下から脇にあるピアノのところまで歩いて、「これは無意識の時」「これはプレゼンスに居るとき」と言って二パターンを見せてくれました。

無意識だという時も、私にはとても優雅に「今ここ」に居るようにも見えました。私だったらこれがプレゼンスだと言ってしまいそうです。けれど次にプレゼンスの歩き方を見たとき、その違いがはっきり分かりました。

最初の時は、「ピアノのところに行く」という目的に意識を固定させていたので、確かに意識は「今ここ」にはありませんでした。プレゼンスの歩き方では、瞬間瞬間に完全に意識がありました。

目的にフォーカスして今ここに意識がないという状態、確かに心当たりがあります。リトリートの時、私は「何かを掴んで帰る」という目的にがっちりと意識を固定させたことで、期待を抱いてしまったため、肝心のプレゼンスに居ることがなかなかできなかったのです。

また、日常のあらゆるところで「目的」と「期待」を持ってしまう癖が骨の髄まで浸透しているようで、現時点→目的地と言う構図の中の、どの地点においても「今この瞬間」が無いことがわかります。

現時点は、変えるべきあってはならない現実なので、即座に否定されてそこから去っていますし、→は目的地に行くことが最重要であると認識する私にはさっさと通過すべき重要ではないところとなり、目的地はたどり着いたらすぐに用のないものとなるのです。

こんな生き方をしていて、一体自分の人生を生きていると言えるのでしょうか?

私たちの社会では、目標設定とその達成がとても重要視されます。目標を設定したら達成までのあらゆる瞬間は、達成のために費やされる二次的なものとされがちです。もちろん、プロセスも大事と言われることもありますが、結果が出なければ元も子もない、という強烈な脅迫観念があるのではないでしょうか。

プレゼンスは、ある意味これとは全く違った在り方のレベルなので、ややもすれば目的や期待を抱いて前のめりの意識になってしまう私たちには、微妙に今この瞬間からずれてしまうそうした癖に気づき、様々な心理的葛藤と超えて実践し続ける注意力が要りますね。

「今この瞬間」のすべてを否定しないというのは、本当にすごいことです。今日も一体どれだけ自身の現実に不平不満を言ったか。「今ここ」とは違うものを求めない在り方を通して気づくことも多そうです。注意深く取り組んでいくことにします。

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