親子間のわだかまりを抱えている人は実に多いものです。私たちが生まれ落ちて、最初に経験するのが親であり養育者との関係です。そこに苦しみがあると、その後の人生は困難を抱えることになりがちです。これについて、思うところを描いてみます。
私自身も、親との関係については随分取り組んできました。決して酷い虐待を受けていたとか愛されていなかったわけではなく、父も母も親になるために、試行錯誤しながら必死で育ててくれたのだと思っています。そう思いつつも、どこかで憎しみすら感じている自分を否定することはできませんでした。
私は母との関係の方が強烈で、幼い頃に母が私にした仕打ちをひどく恨み、憎んでいました。母としては良かれと思ってやったことの数々が、私にとっては地獄以外の何ものでもなく、毎日死にたいと思いながらどうにか生きていた状態でした。
それなのに、母が当時のことを「こんなにたくさんのことをしてあげたでしょう。あの時代、世間ではみんなそうだったのよ。ほら、この芸能人の○○もおんなじじゃないの。お前はこんなにしてもらっても、感謝の気持ちすら持てないのか」と言っているのを聞くと、とても平静ではいられません。
どれだけ私が苦しんだのか知ろうともしないで、「してあげた」ことしか意識にない母に、強く反論したこともあります。けれど、その度に母はただ「こんなにもしてあげたのに、そんな風に言われるなんてショックだ」と言って、自分が被害者になるばかりです。
頭で考えれば、母はやりたいことがたくさんあったのにさせてもらえなかった、諦めてきたことの多い人生でした。そうした立場から見れば、私が受けた恩恵は、どう見ても感謝されるべきはずのものです。
分かっていても、私の感情は理屈では収まりません。まぁ、収めようとも思っていませんけれどね。
私自身もよく言うことですが、こうした苦しみも、魂が計画してきた学びの一環です。母は私の計画のために、忠実に自分の役割を演じているだけであり、それは人間目線を越えた愛のなせる業です。そうは言われても、現に今味わっている苦しみには、何の足しにもならないのです。
感情は感情として対処されなければなりません。いくら思考で理屈をつけてみても、それが収まることは決してないのです。よって、こうした問題に取り組むとき、理屈は感情の暴走を防ぐ堤防にして、その内側のエネルギーに対処するときには、その理屈は持ち込まないことがポイントです。
母への怒りや憎しみ、出来事によって体験した絶望的なまでの閉塞感や悲しみに向き合ったとき、最初はただただ身体の中で噴き上がる感情のエネルギーを無言の叫びで表現し続けていました。
苦しい感情のエネルギーは、心も辛いですが、同時に身体もその辛さを体験しています。私たちは、辛い感情が起こった時、ほぼ瞬間的に意識が身体と心を置き去りにして抜けてしまいます。そうなると、意識ではその辛さを生々しく体験しないで済みますが、心と身体は「置いて行かれた。誰も助けてくれない」と深い絶望に突き落とされるのです。
私が身体の中で無言の叫びによって感情のエネルギーを受け止めたのは、意識が置いてきてしまった心と身体のところに戻って、統合された状態でそれを受け止めるためです。
その長いこと抑圧されてきたエネルギーは凄まじく、あばらが折れるんじゃないかと思うくらいの圧力を感じたものです。こんなものをそれまで身体の中に抱え込んでいたのですね。
これを封印しておくために、毎瞬どれだけのエネルギーを費やしていたでしょうか。何もしなくても、それだけでへとへとになってしまいそうです。これでは、疲れやすいのも当然ですね。
イメージワークの中で、母を罵ったりナイフで切り裂いたりということもしましたが、セッションではそういうイメージを持つことをためらう方も多いです。それはいけないことだ、と無意識にブレーキをかけるのですね。
けれど、ワークは自分の中の感情に責任を持つために行うもので、決して相手を呪うために行うものではありません。いかに抑圧し、隠したとしてもあなたの中に怒りや恨みがあれば、それは既に相手に飛んでいます。
自分の中にこうした醜く凶暴な一面があるということを、自身が認め、受け入れることが大切なのです。そうでないと、それらを否定し分離させたまま、手の付けられない凶暴なモンスターにしてしまうでしょう。けれどもしこれを受け入れ、統合するなら、それらは決してモンスターにはなりません。
私たちの多くは、ここを取り違えているのです。
私は自分の中の深い怒りや憎しみを受け入れました。その結果、今母との関係はとても穏やかです。母は、私の中にそうした側面があるということを教えるために、最高の引き金になってくれました。
憎まれ役を引き受けてくれた母は、間違いなく私のソウルメイトであり、本当に感謝しています。
まだ学びは続いていますが、楽しみながら歩んでいければと思っています。